Film 1:『ブレード ランナー』と写真

SF映画の金字塔の一作
『ブレード ランナー』と写真 

 Cinema 1 × Photography

 

         

  皆さんご存知のあのレプリカントたちは、宇宙植民地から地球へと侵入した訳とは、「写真」と深くかかわっていたことに気づかれていましたか?

 


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オープニングシーン

 

 二十一世紀初頭の酸性雨降るロサンジェルスの夜景。高層ビルには、「強力わかもと」の映像コマーャルが映し出される。日本髪を結った和装美人の微笑。琵琶による和の調べが妖しく流れる。 

 

 中空から不思議な角度でとらえられた日本女性の艶やかな笑みは、原色のネオン瞬くロサンジェルスの夜景をさらに妖しく彩る。空中に屹立するマヤ神殿風の巨大建築物。夜空を自在に飛翔するヘッドライトを灯したスピナー(飛行車)や空飛ぶ巨大広告飛行船(シド・ミードのデザイン)は、当時、近未来のイメージを決定づけたといえるほどの衝撃だった。

 

上空を支配する科学物質文明とアジア的屋台がめくの下界。邦楽(「千鳥の曲」)はその両世界に響く都会の潮騒だ。

 

 

 本作の物語の中軸は、で奴隷労働に反旗を翻し、地球に潜り込もうとするネクサス6型レプリカント4体と、地球上では非合法な存在とされる彼等を仕留める任務を負ったロサンジェルス警察の専任捜査官ブレードランナーハリソン・フォード)の追走劇にある。

 

 

レプリカントを製造し宇宙植民地に派遣したタイレル社で秘書をする美人レプリカント、レイチェル(ショーン・ヤング)とのい恋愛劇は、人造人間アンドロイド(=レプリカント) と人間との違いの消失点(ヴァニッシング・ポイント)を描き、物語に奥行きを与えている。

またや人工蛇、建築群やそれを見つめる緑色の瞳の持ち主など、この映画は他の追随を許さないほどの様々な謎に満ち溢れている。

 

 

  「写真を持って来たか」と問うレプリカント

 

 

   じつはあらためてディレクターズ・カット・ヴァージョン(1992)を観て記憶が喚起されるまで、今回記したことの多くは記憶かられてしまっていた。人はまったく忘却の生物だ。その忘却の成果なのか自分の記憶の悪さからかと思った時、私は少なからず震撼した。

記憶(過去)の欠落を補うために写真を欲するレプリンカントのように、私は再び映画を観て記憶を獲ようと思ったからだ。わたしの感情はレプリンカントさながら不安を打ち消そうと波打ってしまっていた。

 

Blade Runner

 

  以下記してみたのは、記憶の欠如を補うため再度映画を観て確認がとれたものだ。舞台が二十一世紀にもかかわらずオールドメディアのプリント「写真」が出てくるシーンが意外に多くある。しかも物語の中枢に繋がる部分においてなのだ(註1)。皆さんはどれほど記憶されておられるだろうか。

 

   最初の場面は、レプリカントのリーダーであるロイ(ルトガー・ハウザー)が、もう一人のレプリカント、レオン(検査官に感情移入テストを実施された中年の男。宇宙植民地では核施設の肉体労働者)に、街中で突然「写真を持ってきたか?」と問うシーンだ。レオンは自分の部屋に誰かがいたために写真を持ってこれなかったことを告げる。ロイは悔しそうな顔をして立ち去っていく。

 

この場面は注意深く観ていないと何のことやら記憶に残らないしさっぱり分からない。数シーン後にその理由が明らかにされている。その場面とは、ロイではなく、タイレル社の秘書レイチェルとブレードランナーのデッカートが登場するシーンだ。

 

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